銀雨のこととか色々。
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「あと、1時間、か……」
呟く。
ただ、呟く。
何も意味も無く、呟く。
って、何も意味無い言葉なんて無い。
全ての言の葉は空気に溶けて、世界の一部になる。
そうやって積もったものが時間となる。
そうして、時は過ぎていく。
止めようも無い、流れに乗っていく。
「0時過ぎても、明日は明日なんだよなー。何が年越しだよ」
365日を区切っただけで、みんななんでこんなに騒いでるんだよ。
思っても、何も止まらない。
そう、世界が決まっている。
だから。
「また、明日」
そう、俺のカスタムギター---HANDSとFACESに笑いかけて、自分はドアに手をかける。
ほんのり、だしの匂い。
年越し蕎麦。
「健一ぃ、食べるわよー」
「伸びるわよー」
姉ちゃんたちに呼ばれるのは、何か癪に触るけど。
「はいはい」
「はいは1回でしょ!」
だから、また明日。
また明日。
みんな、また明日な。
呟く。
ただ、呟く。
何も意味も無く、呟く。
って、何も意味無い言葉なんて無い。
全ての言の葉は空気に溶けて、世界の一部になる。
そうやって積もったものが時間となる。
そうして、時は過ぎていく。
止めようも無い、流れに乗っていく。
「0時過ぎても、明日は明日なんだよなー。何が年越しだよ」
365日を区切っただけで、みんななんでこんなに騒いでるんだよ。
思っても、何も止まらない。
そう、世界が決まっている。
だから。
「また、明日」
そう、俺のカスタムギター---HANDSとFACESに笑いかけて、自分はドアに手をかける。
ほんのり、だしの匂い。
年越し蕎麦。
「健一ぃ、食べるわよー」
「伸びるわよー」
姉ちゃんたちに呼ばれるのは、何か癪に触るけど。
「はいはい」
「はいは1回でしょ!」
だから、また明日。
また明日。
みんな、また明日な。
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そうさ、ボクがカナリア。
「…………」
声が出なかった。
「あ」
小さく音がした。
母音。
A。
ファの♯。
そして、ヒューヒューという空気漏れ。
「風邪でしょ」
洋子姉ちゃんが呆れた。
「風邪じゃないとしても、耳鼻科行った方がいいかも」
慶子姉ちゃんが笑った。
「何で耳鼻科」
「呼吸器内科とかより、喉は専門みたい。どこかの重役さんが自慢気に話してたから」
「ふーん」
基本的に、俺は慶子ねえちゃんの方が頭が良いと俺は思ってる。
それは父さんも母さんも慶子姉ちゃんも、もしかしたら洋子姉ちゃん自身もそれは思ってるんだけど、口に出さないだけかも。
洋子姉ちゃん、負けず嫌いだから。
「ともかく健一、寝るのが1番だからねっ」
なぜかプンスカ怒られた。
うーん、買い物にでも付き合わせるつもりだったのか。
「母さんにはメールしておいたから」
ありがと、と俺は口パク。
ふふふっと慶子姉ちゃんは首をかしげる。
なんでそんなことお礼言うのよ、みたいに。
「まあ、母さんが帰ってくれば大丈夫よ」
「そうね」
「夜勤だから、あと2時間くらいあれば返ってくるわよ。泣かないでね、健一」
誰が泣くか。
ちびっこじゃあるまいし。
でも、看護師の母さんが返ってくれば、うちは大丈夫って感じが凄いする。
父さんも凄いけど、母さんの方がすげーっっていうのか。
強い?
違うな、オーラが違う。
強いのは父さんだけどね。
「あんたにとって、声出ないのはきついと思うけど、我慢しなさい」
釘刺された。
洋子姉ちゃんそういうとこは鋭い。
「じゃ、私は会社行ってくるから」
「私も講義」
「愛しの弟のためにサボリは無しなの洋子ちゃん?」
「そういうアナタはどうなの慶子ちゃん?」
「アタシはお仕事だから、ね?ごめんね、健一」
もうどうでもいいから早く行ってください。
声が出ない。
それだけなのに、不安。
そういう自分が嫌い。
ネガティブモード発動。
センサー感知して、みんなにばれちゃうから何か風邪って嫌い。
健康第一なのに、俺。
あーあー。
この思いを歌いてぇ。
キーボード触るくらいならいいかなぁ……。
ゴソゴソと布団抜け出して、コンセントを差し込む直前鳴った携帯。
ワンコーラスで終わるメール着信音。
『寝ろ。by 母』
やっぱつえーや、母さん。
籠の中でも歌えない。
今日のボクは悲しきカナリア。
加護の中でも歌えない。
今日のボクは無言のカナリア。
おやすみなさい。
「…………」
声が出なかった。
「あ」
小さく音がした。
母音。
A。
ファの♯。
そして、ヒューヒューという空気漏れ。
「風邪でしょ」
洋子姉ちゃんが呆れた。
「風邪じゃないとしても、耳鼻科行った方がいいかも」
慶子姉ちゃんが笑った。
「何で耳鼻科」
「呼吸器内科とかより、喉は専門みたい。どこかの重役さんが自慢気に話してたから」
「ふーん」
基本的に、俺は慶子ねえちゃんの方が頭が良いと俺は思ってる。
それは父さんも母さんも慶子姉ちゃんも、もしかしたら洋子姉ちゃん自身もそれは思ってるんだけど、口に出さないだけかも。
洋子姉ちゃん、負けず嫌いだから。
「ともかく健一、寝るのが1番だからねっ」
なぜかプンスカ怒られた。
うーん、買い物にでも付き合わせるつもりだったのか。
「母さんにはメールしておいたから」
ありがと、と俺は口パク。
ふふふっと慶子姉ちゃんは首をかしげる。
なんでそんなことお礼言うのよ、みたいに。
「まあ、母さんが帰ってくれば大丈夫よ」
「そうね」
「夜勤だから、あと2時間くらいあれば返ってくるわよ。泣かないでね、健一」
誰が泣くか。
ちびっこじゃあるまいし。
でも、看護師の母さんが返ってくれば、うちは大丈夫って感じが凄いする。
父さんも凄いけど、母さんの方がすげーっっていうのか。
強い?
違うな、オーラが違う。
強いのは父さんだけどね。
「あんたにとって、声出ないのはきついと思うけど、我慢しなさい」
釘刺された。
洋子姉ちゃんそういうとこは鋭い。
「じゃ、私は会社行ってくるから」
「私も講義」
「愛しの弟のためにサボリは無しなの洋子ちゃん?」
「そういうアナタはどうなの慶子ちゃん?」
「アタシはお仕事だから、ね?ごめんね、健一」
もうどうでもいいから早く行ってください。
声が出ない。
それだけなのに、不安。
そういう自分が嫌い。
ネガティブモード発動。
センサー感知して、みんなにばれちゃうから何か風邪って嫌い。
健康第一なのに、俺。
あーあー。
この思いを歌いてぇ。
キーボード触るくらいならいいかなぁ……。
ゴソゴソと布団抜け出して、コンセントを差し込む直前鳴った携帯。
ワンコーラスで終わるメール着信音。
『寝ろ。by 母』
やっぱつえーや、母さん。
籠の中でも歌えない。
今日のボクは悲しきカナリア。
加護の中でも歌えない。
今日のボクは無言のカナリア。
おやすみなさい。
いっそのこと、消えてしまえばいい。
最終電車が通り過ぎた踏切は、その一日の役目を終える。
駅が近いわけでもない、ポツンと設置された踏切は車止めがあり、自転車が渡るのも困難。
幅も狭いのに、なんであるのか分からない踏切。
さっきまで微妙な不快和音を鳴らしていた警報機を見上げながら、俺はため息をついた。
空は曇天。
八分咲きの桜を守るような花曇り。
それにしても風が強い。
理論的に、春は天候が安定しないのだという。
そんな春を好きだという人が多いのは、きっとあの桜は約八割を占めているのだろう。
そう解釈している。
俺はというと、姉貴たちがアイスが食べたいと言って駄々をこねた結果、コンビニまで行ったはいいが、ご希望のアイスが置いてないという最大難関の壁にぶちあったっていた。
とりあえず似た様なものを揃えて、買って、止まった。
家に帰るのでは無く、この時間誰も通らないようなこの小さな踏切で時間を潰すという姉貴たちに言わせると最大の無駄な時間を過ごしていた。
もちろん、アイスは溶けているだろう。
予測していた。
帰りたくなかった。
正確には帰ったら終わってしまう気がしたのだった。
さっきまでのあの不況和音の警報機のリズムに、
最終電車の揺れのようなライディングするベースライン乗っけて、
俺の足音をパーカッションの飾りにして、
強いこの春風の鳴くようなキーボードでコードを作り、
桜が散っていく切れ切れの言葉と歌声を乗っけて、
俺のギターをかき鳴らす方法を捜していた。
なんか、もう全部消えてしまえばいい。
メロディーを作り出すんだ。
余分なものはいらない。
「…・…帰る、か」
久しぶりに呟いた一言は、諦めのようだった。
すでに液状になったであろうアイスの袋を振り回し、俺は車止めを超える。
そして、誰も、何も通ってない線路を踏みつけた。
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この作品は、株式会社トミーウォーカーのPBW『TW2:シルバーレイン』用のイラストとして、椎名健一が作成を依頼したものです。
イラストの使用権は椎名健一に、著作権は各イラストマスター様に、全ての権利は株式会社トミーウォーカーが所有します。
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この作品は、株式会社トミーウォーカーのPBW『TW2:シルバーレイン』用のイラストとして、椎名健一が作成を依頼したものです。
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